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その3

「マスコミ対策」は「安全対策」

  このコラムは、開門神事を取材しようとしているメディアの方々に一読してもらいたいものですが、全てのメディア報道に対して批判しているわけではありません。ほとんどのメディア関係者はルールを守り、とても真剣に取材して下さっています。しかし、一部では関係者が怒りすら覚える、失礼な取材が行われています。

 取材する側もされる側も、どちらも気持ちよく神事を終えて欲しい…その願いから、率直な思いを文章にしました。ご理解のほど、よろしくお願いします。


◆テレビ取材が混乱の起点に

 近年の開門神事は、参加者の増加が顕著だ。以前は徹夜組は多くて100人程度、開門時には1500人が集まる程度だった。しかし2008年度はクジ引きに1500人、開門時には2500人もの人々が集結した。このような状況もあり、参加者の人員整理は、神事の運営において大きなウエイトを占めている。

 だが神事を進めていると、必ず急に参加者が騒ぎ出したり、整然と並んでいた列が一瞬にしてバラバラになる場面と遭遇する。その“キッカケ”は8割がた決まっている。「テレビカメラ」だ。こちらがいくら呼びかけて参加者たちを収めても、テレビ取材陣が撮影のためのライトを点けた瞬間、その苦労が一気に崩れ去る。特に開門直前に人々が一気に色めき立ってしまえば、とても危険な状況に陥る。現状の開門神事においては「マスコミ対策=安全対策」と言っていいくらいだ。


2008年開門前、本殿で待つ報道陣。この過熱ぶりは…

 2008年度には、極めて危険な撮影も行われていたことが確認された。2003年度の開門の際、報道陣が撮影に使っていた脚立に参加者が激突、次々と転倒者を出す事件があった。これを受け、次の年より赤門付近での脚立および三脚での撮影は禁止された。

 ところが2008年度の開門直後の映像には、何者かが三脚を使って撮影しているのがハッキリと映っている。某局のニュースでは、このカメラで撮られたと思われる映像が流されていた。三脚の使用禁止を知らなかったのか、もしくは知っていながら使ったのかはわからないが…事故につながらなかったのは奇跡的だ。


開門時に三脚で撮影…本当に危険な行為だ

 この画像だけで、どれほど危険な行為だったのかわかると思う。わずか数十センチほど横を先頭グループの参加者が駆け抜け、すぐに真正面から後続グループが迫ってきている。この後、ギリギリのところでカメラをどかして事なきを得たが…もし参加者が接触していたら転倒→将棋倒しの大事故につながるところだった。

 また近年には、マスコミの取材によって神事の運営に支障をきたす場面も。最も代表的な例は2007年のクジ引き。昨年に考えて欲しい「福男選び」〜クジ引きシステム導入の明と暗で書いたように、クジ引きを一時中断せざるを得ない状況にまで陥った。これを受け、2008年はクジ引き時に、マスコミと参加者への接触を制限することにした。具体的には「テレビカメラの設置エリアを指定。参加者へのインタビュー等を希望するときは、目当ての参加者のクジ引き終了後、離れた場所に指定したインタビューエリアの呼び出して行ってもらう」というものだった。だが…やはりそれは破られた。準備が完了し、いよいよクジ引き開始!という時に突然に大歓声が上がった。整列している参加者の列の後ろのほうで撮影が始まったのだ。これにより再度の人員整理が必要となり、クジ引きの開始時刻が遅れてしまった。


大きく移動させられていた門松

 さらにこの年はクジ引きが終わったあと、神社会館前に設置されていた門松が、大きく移動させられていることが判明した。状況を調べると、テレビ取材クルーの何者かが移動させたのは間違いない。門松はカメラ設置エリアとクジ引き会場の間にあり、撮影に邪魔だったのかも知れないが…無断でこのような行為をしていいはずがない。関係者の一人は怒り心頭であった。

 2004年の“福男騒動”後、報道量は格段に増加、逆にその質(取材姿勢および報道内容)は落ちたと言われている。ある参加者は、その理由について「在京キー局」にある、と言った。在京キー局とは、東京に位置する民放放送局の系列の“本局”のこと。例えば関西のMBSならキー局はTBS、同じく関西テレビならフジテレビ、といった具合だ。

 ずっと前から開門神事の様子はテレビで伝えられてきたが、十年ほど前までは、あくまで関西ローカルでのこと。ローカル局は毎年のように開門神事を取材しているので、どのような行事であるかを大体は分かっている。そのため取材姿勢も放送内容も、酷いものは少なかった。

 ところが、“福男騒動”で神事の知名度は一気に全国区になってしまったため、ローカル局ではなく、東京キー局から取材クルーがやってくるようになった。念を押しておくが、東京から来ている取材陣でも、本当に頭が下がるぐらい真摯に取材してくれる人たちが大半である。だが一部には残念ながら「東京から、わざわざローカルイベントを取材しにきてやった」と言わんばかりの、傲慢な態度の人たちがいるのは事実だ。

 ぶっちゃけ関西の地方の神事にも関わらず、首都圏のみで放送される番組が取材しに来る現状は“異常”とも言える。考えて欲しい「福男選び」〜伝える側もレベルアップをで挙げた、「福男選びって何する祭り?」などという“論外”な質問を投げかけ、私が渡した「取材についてのお願い」を読まずに引き裂く…そんなレベルの報道陣も来ていることは確かである。

◆早急なマスコミ対策の整備を

 これまで神社側は「取材するなら、いつでもどうぞ」的なスタンスを取っていた。事前に簡単な取材への説明もあるようだが、ほぼ“オールフリー”状態。私は取材に来るマスコミへの対策を、早急に確立させるのが必要ではないかと思う。

 例えば。

 神事の取材を希望する社には事前に申し込んでもらい、取材姿勢や取材内容について注意を促す説明会を行う。境内で取材する際は、必ず取材許可を表す目印(腕章など)をつけてもらう。厳格に取材可能&取材禁止のエリアと時間を決め、守らなかった社に対しては、来年度以降に取材禁止を含めたペナルティを課す…。

 「そこまでしなくても」と思うだろうか。私もそう思う(笑)。やはり、ある程度の注意を促しつつも自由に取材してもらい、開門神事を広く正しく伝えてもらうのがベストの形。しかし…今のままではマスコミ取材がきっかけに、何か重大なコトが起こるのではないか…という不安は拭い去れない。

 何度も述べている通り、開門神事はマスコミの露出によって成長してきた。だがもはや、神事のことをもっと取り上げて欲しい!という段階は終わっている。次は、マスコミから神事を「守っていく」ことを考えなければならない。

 「2時間」の意味と二つの自覚で書いたように、2009年は参加者の「本気度」を測る時間を設定した。そろそろ、マスコミの「本気度」も測っていい時期なのかも知れない。

 

 p.s. ちょうどこの文章を書いている時、某ラジオ局から連絡があった。神事前に、番組に出演して欲しいというのだ。私は「神事の参加希望者に呼びかけられるなら」と初めはOKしたが…よくよく調べてみると、その内容は「開門神事で誰が勝つかを予想、それにリスナーがベット(賭ける)」というものだった。神事がそのような対象になることに対して、協力などできるはずがない。私は話を丁重にお断りするとともに、これは「神事」であることを強調し、企画の見直しをお願いした。恐らく理解してくれたと思うが…。神事を守っていくことへの気持ちを新たにした出来事だった。

 それにしても、タイミング良かったなぁ(^_^;)