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その4

伝える側もレベルアップを


◆モラルが必要なのは、参加者だけ?

 「あの日の朝焼け」で何度も触れているが、近年は参加者の質の低下が著しい。神事に参加するとは到底思えないコスプレ参加者はそのいい例だろう。しかしちょっと待った。レベルが下がっているのは参加者だけなのだろうか?

 はっきり言おう。福男選びを取材しに来る、マスメディア側の質も下がっている。もちろん、多くは真摯に取材し、世間に神事の様子をしっかりと伝えてくれる。だが…特に07年度の「福男選び」では一部の取材陣はあまりに酷く、参加者たちの怒りを買っていた。これも、神事が有名になりすぎた弊害なのだろうか…。

毎年、多くの報道陣が詰め掛けるが…

 開門神事が行われる「十日えびす」は、えべっさんの総本社・西宮神社の大祭だが、少し前までは“地域の祭り”的な祭りであった。歴史を調べても「福男選び」の参加者の多くは、神社の門前町に住む信者たちだった。もちろん伝える側も関西局が当たり前。全国ニュースでその様子が流されることも無かった。

 ところが近年の「福男選び」の知名度の高まりから、07年度は4局もの在京キー局が集結した。つまり、全国放送を前提としている取材が多くなったということだ。神事が有名になり、ヨカッタヨカッタ…とはいかない。この年は私を含め「福男選び」に関わっている多くの人がウンザリしてしまった。

 「福男選び…って、具体的に何をする祭りなんですか?」

 この質問を受けた時、さすがに目がテンになった。かなり有名な情報番組の取材陣…、数年前の騒動の時に、チラっと映像を見たことはあるが、それ以上の知識は持ち合わせていなかった。神事の起源等はもちろん、午前6時に開門…という最低限の知識もない。あとで聞いたところ、そのテの質問を多くの参加者に投げかけていたようだ。そしてこの年、そんなレベルの取材陣は1社だけでは無かった…。

 ある取材陣はさらに酷かった。この年、私は近年の報道の質の低下を懸念し、マスコミ向けのプリントを用意し、各取材陣へ配っていた。

07年に報道陣に配ったプリント

 あくまでマスコミ向けのため、内容はここでは公開できないが…大筋では「神事であることを忘れずに取材して欲しい」といったところか。これをその取材陣に渡したところ、全く目を通さず。その数分後、そのプリントは読まれぬままに真っ二つ。裏面に「○○テレビ」と書かれ、脚立の場所取りに使われていた。

  その後も、その取材陣による“暴挙”は続いた。参加者から借りたテープをほとんど使い切ってしまう。筆記用具が無いからと、無断で参加者の荷物を漁る。特定の参加者に取材のオファーを出しておきながら「方針が変わった」と取材を取りやめ、その通知も無しである。

◆屋台管理団体と報道陣とのトラブルも

 また、近年は神社の屋台を管理する団体と、報道陣とのトラブルも増加している。閉門の10日午前0時〜開門の午前6時までは神事が行われる時間で、厳密には神社関係者以外、誰も境内に立ち入ってはならない。報道陣は取材のために、その時間も境内に居られるという“暗黙の了解”があるのだが…報道陣のあまりに勝手な振る舞いに先の団体が激怒。神事終了後、団体と報道陣の間で会合が持たれ、大きな問題になったようである。

 また、近年は「福男選び」がニュース番組でなく、ワイドショーで紹介されることが多くなっている。中にはあまりに酷い内容の扱われ方をしているものもある(特に、コメンテーターの発言等は酷いものが多い)。「クジ引きシステム導入の明と暗」で触れたような、神事の流れを妨げる取材も見受けられるようにもなった。

 「福男選び」に参加するならば、最低限のモラルが必要になってくるが、それは“取材する側”も同じこと。取材するにあたり、もう一度各々のモラルや、「神事」を扱うことへの自覚を確認して欲しい。取材する側も、される側も気分よく神事を終えたい。もし取材によって参加者の気分が害されたり、神事の流れに影響が出るようなことがあれば…私は断固、抗議したいと思っている。