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             <特別編>
エキスポタワー
       大阪府吹田市
解体を待つ塔@

2002月3月にエキスポタワー解体が発表されて以来、私は足しげくタワーの元へ通うようになった。
解体工事が開始されると、もう完全な姿のタワーは見られなくなる。その前に、その姿を胸に焼き付けておきたかったのだ。


大阪市営モノレールの「万博記念公園」駅を出ると、ひときわ高いエキスポタワーが目に飛びこんでくる。


タワーを見に来たある日時のこと。
隣接する遊園地、エキスポランドへ来た学生だろうか、若い女の子達がタワーを指差し、
「何あれ、気持ち悪い」
と言っているのが聞こえた。

かつて「未来的」と持てはやされたその姿も、現代の若者にとっては嫌悪感を感じるほどのものなのか・・・。

モノレールの駅からエキスポタワーへは、
案内所の裏の道から行ける。
道の入口には、一応案内看板があるのだが・・・。
「エキスポタワー」の部分だけ消されている・・・。
中途半端に読めるのが嫌すぎる。
恐らく、閉鎖された頃に消されたのだろう。

これはちょっとヒドイと思う。
展望塔としては機能しなくなったかも知れないが、
「万博のシンボル」としてまだ立っているじゃないか!

解体が決まった今となっては、もはや文句も言えないが・・・。
エキスポタワーへ向かう階段の脇には、たくさんのポールが立てられている。
万博開催中はこのポールに、世界各国の国旗が掲げられていたのだ。


たくさんの国旗がはためく、未来の象徴のタワーへと向かう階段・・・。
当時はさながら「未来へと続く階段」といったところだったのだろうか。

しかしその階段も、今となっては利用する人はほとんどいない。私は一人、その階段を上って行った。

タワーは周りを柵で囲まれているが、それでもかなり近くまで行くことができる。

タワーのたもとから見上げると、まさに大迫力だ。さすがは120メートル超の巨大な塔、圧倒的な存在感がある。



遠くからは見えなかった複雑な構造が良く解る。改めて、タワーの奇抜なデザインに心奪われてしまう。
しかしそれと同時に、タワーが現在置かれている現実を、徹底的に思い知らされることとなった。

色あせた塗装、錆びた鉄骨、長年風雨にさらされた汚れ。何かの拍子に、ガラガラと崩れてしまうのではないか・・・とさえ考えてしまう。

まさか、ここまで老朽化が進んでいるとは・・・。

正直、タワーの現状をを見るまでは、
「タワーを解体しないで欲しい」と思っていた。
だがタワーの現実を目にした後は、

「早く解体してあげて欲しい」

そう思うようになった。

頼むから、早く解体してあげてくれ。

輝かしい「未来の象徴」として建造されたこの塔。
かつては人々から、羨望の眼差しで見つめられたのだろう。
その塔は今・・・人々に忘れられ、放置され、朽ち果て・・・。

これ以上、惨めな姿をさらすのは悲しすぎる・・・。

鉄骨のアームが複雑に組み合う、タワーのキャビネット部。
錆び・色あせ・汚れなど、激しく老朽化しているのが解る。
エキスポタワーは、馬のヒヅメ状の、3つの壁に囲まれている。
その壁の穴から、タワーの入口付近が見える。
万博期間中の半年の間に、この入口から148万人もの人々がタワー内部へ入ったという。


無造作に置かれたブルーシート、何に使うか解らない資材、斜めに傾いたテントなど、もはや廃墟以外の何物でも無い。

薄汚れたガラスの向こうに、エレベーターのゴンドラが見える。かつてはこれを使い、タワーの展望室へと上っていたのだ。

黄色く丸みを帯びたその姿は、ビートルズの映画「イエローサブマリン」を思い起こさせる。


もう二度と動く事の無いゴンドラ。このゴンドラが空高く上っていく姿を、一度でいいから見てみたかった・・・。

解体を待つ塔Aへ続きます