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             <特別編>
エキスポタワー
       大阪府吹田市
タワーの未来は


タワー解体工事も終了間近の2月17日。
私はエキスポタワーの解体工事を請け負っている、
「大成建設」に、次のようなメールを送った。


大成建設 様

初めまして。私は平尾という者です。
大成建設様が手がけておられます、大阪府吹田市の「エキスポタワー」解体工事をずっと見させて頂いていました。

私はエキスポタワーが好きで、時間のある時はいつもタワーを見に行っておりました。
だんだんと解体されてゆくタワーを見て、とても悲しい気分でした。
と、それと同時に、危険な高所で一所懸命に作業されている大成建設の作業員の皆様には、とても感心いたしました。
時には作業員の方から「良く見に来られていますね」と声をかけて下さったり、こちらの質問にも快く答えて下さったりし、作業員の方々には感謝の気持ちで一杯です。


さて、そのエキスポタワーの解体工事も、間もなく終了・・・という感じでありますが、大成建設様に質問がふたつ御座います。

1、エキスポタワーのキャビンがひとつ、廃材とは別に運び出されましたが、あのキャビンの行方は?
  保存するのであれば、どこで、どのように保存されるのでしょうか。
  是非とも、あの残されたキャビンが今後どのように扱われるのか、教えて頂きたいのです。

2、エキスポタワー跡地の利用方法は?
  解体決定当初は「未定」とのことでしたが・・・跡地の今後について、何か情報はありますでしょうか?
  現在、万博ファンの間では、様々な憶測が飛んでおります。どうか、知っておられる範囲で教えて下さい。


お忙しい中とは思いますが、どうかお答えを頂けますよう、よろしくお願いいたします。
また大成建設様から回答を頂けた場合、私のHP上で、その内容を一部公開させて頂くことをお許し下さい。
多くの人が知りたい情報だと思いますので・・・。


大成建設様、本当にこのたびはタワーの解体工事、お疲れ様でした(まだもう少し続きますが)。
そしてありがとうございました。
 

平尾 亮



果たして、どのような返信が返ってくるのだろう。
もしかしたら大成建設側は、このような「今後」のことは、全く知らないかもしれない。 また、このような手間のかかる問い合わせには、応じてくれないかもしれない。

期待半分、不安半分。私はとにかく、返信を待った。


そしてその4日後、2月21日。

私の携帯電話が鳴った。

電話の主
もしもし、大成建設さんに、質問のメールを出された方ですか?
平尾
はい、そうです。
電話の主
初めまして、私は万博記念協会の吉田という者です。
大成建設さんが、あなたのメールに対し、“この質問には当方では答えられないので、万博記念協会から直接に回答をお願いします”との依頼を受けました。
私が、あなたの質問にお答えすることになりました。
平尾

・・・・!!!

あの・・・・失礼ですが・・・・、
吉田元雄さんでしょうか?

電話の主
はい、そうです。
吉田元雄さんである!!!

今では少なくなった、万博当時から、ずっと万博協会に勤めておられる方で、エキスポタワーの建設から解体までを、ずっと見守り続けていた方である。

詳しくは当HPのエキスポタワー資料集内、2002年9月10日付けの日本経済新聞記事「未来の夢見た塔、最後の夏」を読んで下さい。

まさか、吉田さんと直接お話できるとは・・・!!!

私は言葉を選びながら、吉田さんに質問を投げかけていった。
なお、発言者を明確にするため、色分けを行っている。
平尾
私・平尾の質問・発言は、水色背景。
吉田氏
万博記念協会・吉田さんの回答・発言は、桃色背景。
まとめ
平尾の視点から見たまとめ。白色背景。
この質問・回答にどのような意味があったのかを解説。 
1.メールでの質問事項・キャビンの行方について
平尾
廃材とは別にひとつだけ、キャビンが解体されずに置かれていました。
先日、そのキャビンが解体され、運び出されるのを目撃しました。

あのキャビンは今後、どのように使用されるのでしょうか?
吉田氏
残されたキャビンの行方は、ふたつあります。
菊竹先生(注:菊竹清訓氏=エキスポタワーの設計者)の元、もうひとつは美術家・ヤノベケンジさんの元です。

菊竹先生はキャビンの部品を、事務所の玄関のひさし(!)にとして取り付ける予定でおられるようです。菊竹先生の事務所は人の出入りも多いですから、かなり人目につく場所に置かれことになるとと思います。
平尾

ヤノベさんにタワーの部品を送るというのは、以前からTV等で言っておられた、「タワーの廃材を使った美術作品」のためでしょうか?

吉田氏
そうです。

知っての通り、万博記念公園内にあります「国立国際美術館」は、近い将来に移転が決まっています。その美術館の最後の大きなイベントとして、ヤノベさんの作品を展示する予定です。
平尾
一部は菊竹さんの元へ、一部はヤノベさんの元へ。
エキスポタワーの廃材で、廃棄されずに残されるのは、これだけなのですか?

では・・・、キャビンが「原型のまま保存される」ということは無いのでしょうか?
吉田氏
ありません。

菊竹先生、そしてヤノベさんがどのような形で使用されるかは、最終的には私には解りません。いずれにしても、ある程度加工された状態での保存、という形になるでしょう。
ショック・・・である。

どこかで、キャビンが丸ごとひとつ「保存」されると信じていたのだが。結局のところ、万博記念協会によるエキスポタワー関連の保存は「無し」。残されるタワーの部品は、いずれも加工され、元とは違った姿で保存されることとなる。

ヤノベケンジさんがタワーの廃材を使って作品を作る、というのは以前から聞いていたが、かなり大きな作品になるのかも知れない。国立国際美術館での展覧会に期待は膨らむ。
しかし、 設計者である菊竹氏の部品の使用予定が「ひさし」って(^^;(^^;(^^;(^^;
2.菊竹氏について
吉田氏
先日、私が東京に行きまして、菊竹先生にタワーの解体がほぼ完了したことを報告いたしました。
平尾
その時、菊竹さんはどういう事を言っておられましたか?
吉田氏
「お疲れ様でした、ありがとうございました」、と。

知っての通り、タワーのエレベーターは吹きさらしで、老朽化が激しかったのです。そのことは菊竹先生も承知の上でした。設計段階から「このタワーの寿命はそう長くない」ことは解っておられたようです。
思いもかけず、エキスポタワーの設計者・菊竹清訓氏の話を聞くことができた。
日本経済新聞の記事にも出ていたことだが、設計者にとって自分の作品は、自分の子どものような愛着があるのだろう。

30年以上も前に設計した作品の廃材を引き取る事を決めた、菊竹氏に拍手を送りたい。
3.メールでの質問事項・タワー跡地利用について
平尾
エキスポタワー跡地の利用方法については、決定しているのでしょうか?
吉田氏
全くの未定です。

協会内でも色々な意見がありますが、跡地をどうするかは、現時点では白紙です。
跡地は、しばらくは更地のままで放置されると思います。
一部では色々な憶測が飛び交っていたが、やはりというか何と言うか、結論は「更地」。
恐らく敷地を囲っている柵もそのままで、タワーの敷地内にも入れない状況のまま放置されるのだろう。
4.エキスポタワーに関する噂について
平尾
一部で、こんな噂があります。
エキスポランド内に「エキスポタワーII」等の名称で、小さなエキスポタワーを建設し、同園のシンボルとする・・・と。
そのような予定はあるのでしょうか?
吉田氏
その話は全くのデマです。
そのような話は全くありません。
某掲示板でちょっと話題になっていた、「エキスポタワー復活説」。信じ難くも完全にデマと言い切れないだけに、ちょっとだけ期待していたのだが・・・。
吉田さんにここまできっぱり否定されてしまうと、こちらとしては二の句も継げなかった。
5.タワー解体工事終了について 
平尾
新聞等によると、エキスポタワー解体工事の終了予定日は、万博開催日に合わせた「3月15日」とありました。
その時、何かしらの催し等は予定されているでしょうか。
吉田氏
発表になっている「3月15日に解体工事終了」というのは、万博開催日に合わせたわけではないのです。実は、全くの偶然なのです。たまたま計算したら、万博開催日と重なった・・・という。

また、解体工事が終了しても、何かがある、ということはありません。
平尾

解体作業終了日の次の日、3月16日に、万博記念公園でイベントがあるようですが・・・この際、何かエキスポタワーに関しての発表などはありませんか?

吉田氏
3月 16日に予定されているのは「万博ふれあいの日」といって、何年も前から催されているイベントなのです。エキスポタワーとは全く関係ありません。
よって、そこでエキスポタワーに関してのことは、全く予定しておりません。
ちょっと期待してたんだよな〜。エキスポタワーの解体工事が終了する日、それを記念する催し。
やっぱり・・・無いのか・・・。

それにしてもビックリしたのが、工事終了予定日(3月15日)が、万博開催日と重なったことが「全くの偶然」であったこと。
「万博記念協会、たまには粋な計らいをしてくれるジャン!!」
・・・とか思ってたのだが。
ガッカリした反面、何か偶然以上の因縁を感じるのは、私だけではないはずだ。

エキスポタワー解体終了は、万博にとってひとつの区切りのはず。何かイベントがあってもいいと思うのだが。

今回の電話に関して、「吉田さんからお聞きしたことを、僕のHPで公開してもいいですか」と確認したところ、「支障はありませんので、どうぞ」と、快い返事を頂けました。

最後に思わず、「吉田さんとお話できて、感動しました」と口走ってしまいました。すると吉田さんは、「ははっ、またテレビとかに出るかも知れません。その時はよろしく」とのこと。

お忙しい中、わざわざ電話をかけてきて下さり、丁寧に応対して頂いた吉田さんに心より感謝いたします。




エキスポタワーの今後についての、最大の疑問が解決された。
タワー解体工事完全終了まであと一ヶ月。
「エキスポタワー」の物語は、いよいよエピローグに向けて加速していく。