▲TOPページへ

平成21年(2009年)
 「開門神事福男選び」

 

 私が開門神事「福男選び」に関わってから、すでに干支はひと回り以上変わっている。初めは「いち参加者」という立場で。次第に、自主的に増え続ける参加者の整理や、安全対策の要請を神社側に伝えるようになった。やがて、神社側から正式にクジ引き等を任されるようになり、私を中心とするグループに「開門神事保存会」という名称までついた。だが、それらはあくまで「自主的なボランティア」の域を出なかった。

 ところが。

 今回の開門神事の打ち合わせに出向いたところ、神社側から「今回から、あなたたちに“開門神事講社”として活動してもらいます」と伝えられる。講社…簡単に言えば、神社のために働く公認団体。今までの私たちの活動が認められたからこその通達だった。


講社発足は、新聞でも取り上げられた

 神事の運営で大きな変更点があった。例年は10日の午前0時から境内の社務所前で行われていた、スタート位置を決めるクジ引きの会場が南門の外に移動した。

 本来、10日の午前0時から開門の午前6時までは、本殿で「忌籠(いごもり)神事」が行われており、神社関係者以外は境内に入ってはならない。近年は報道陣や屋台関係者は“暗黙の了解”で境内で待機することを許されているが、さすがに1000人を超える人間でクジ引きというのはいただけない。神社側の決定は正しい判断だ。

 今回はクジ引きの開始時間を午前2時に設定した。その場のノリだけでクジを引いてみようと考える参加者の抑制を期待したのだが…。なんと、クジ引きに集まったのは、予想をはるかに超える4000人!昨年、開門時でさえ2500人程度だったことを考えると、異常とも言える事態となった。


クジ引きには、なんと4000人が並んだ

 開門神事講社は、クジ箱を前年の2個から一気に6個に増やし対応。多くの人の協力により、4000人のクジ引きをを怒涛の1時間ちょいで終わらせた。ただ…参加者の急増により、クジ引きの列はなんと約400メートルにまで伸び、近隣住民から苦情が寄せられる事態となってしまった。

 さらに“異常事態”は続く。開門時に集まった人は、驚くべき6000人!交通規制されている道路を超える直前まで人が押し寄せた。もちろん開門神事の長い歴史の中で、これほどの人が集まった記録はない。ここでも、苦情の電話は絶えることは無かったという。

 予想外の事態とはいえ、近隣に迷惑をかけてしまったのは痛恨の極み。次回以降の対策が求められる。

 

 

開門直後
一斉に走り出す参加者たち。この年から開門を開門神事講社が担当した。

 

ダッシュする参加者たち
別角度から。スタートで飛び出した男性を大迫くんが追う。

 

後続も続々と境内へ
A&Bブロックのスタートが終わり、安全を確認しCブロックもダッシュ!

 

「天秤カーブ」手前で大迫くんが先頭に!

 

「審判の楠」付近。外山くんがトップだ!

 

「えびす坂」で外山くん転倒!小藤くんジャンプ!

 

ゴール前は大混戦!

 

 

 

福男が決定!
左から三番福・小藤くん、一番福・外山くん、三番福・大迫くん

 

歓喜の鏡割り
3人の豪快な一撃で、酒が飛び散る!

 

 今回の開門神事では、発表された一番福が“入れ替わる”という、考えられないようなドタバタ劇があった。ゴール直後に発表されたのは「一番福・大迫くん、二番福・小藤くん、三番福・外山(とやま)くん」であった。「一番福」となった大迫くんは福男の象徴である黄色いハッピも着せられた。ところが…。

 神社側が、何やら協議し始める。何が起こっているのか…そして、当初と違った発表がなされた。

 「一番福は外山くん、二番福は大迫くん、三番福は小藤くん」

 福男の順番が入れ替わるという大失態。しかもその後、TVのニュース番組で何度もそのシーンが流されたが、単純な到達順で見れば初めの発表で合っている。神社側は「神様が選んだ」などとあいまいな表現を通して大騒ぎになることは無かったが、なぜこんな事態になったのだろうか。


ゴール後にもつれ合い、予想外の事態に…

 この結果に対して、個人的に言いたいことは山ほどあるが、ここでは控えよう。しかしながら言っておかねばならぬのは「西宮神社、もっとちゃんとしろ!」ということだ。様々な事象が重なったとはいえ、これは明らかなミス。今後は本殿での到着順を、もっと明確にするような対応が求められる。

 しかし救いは「あの3人で福男が決まったこと」だと考えている。

 


9月23日、西宮まつりに参加した大迫くん(左)と外山くん(右)。
中央は西宮神社の吉井良英禰宜(ねぎ)。

 最終的に一番福に認定された外山くん。悪いのは神社なのに、インターネット上で「本当は一番福ではないのに、何食わぬ顔で認定された」などと中傷され傷つくこととなった。一時は返上も考えたという。…しかし、彼は負けなかった。その後、東京で就職したにも関わらず、その後も福男として西宮神社の年中行事に駆け付けてくれた。その紳士的な姿勢には、本当に頭が下がる。胸を張って欲しい!誰が何と言おうと君が一番福だ!

 そして、初めは一番福と認定されながら、最終的には二番福とされた大迫くん。その悔しさたるや想像を絶するものだったに違いない。しかし彼は笑いながら言った。

 「一番になりたかったけど、3人で福男。福が来るように笑顔で、ね」

 何と清々しい言葉だろうか。神社側の発表に、文句のひとつも言っていい場面だ。そんな状況の中で、こんな言葉を言えるとは…私は胸が熱くなった。我が我が、と他人を蹴落とすようなイメージがついてしまった開門神事だが、彼のような男こそ福男に相応しい。素晴らしい二番福だ!

三番福・小藤くん

 三番福は小藤くん。

 ゴタゴタの陰に隠れてしまった感があるのが残念だが、彼だって立派な福男。帰り際に開門神事講社のテントに寄ってもらい、少しだけ一緒に酒を飲む時間があった。「九州男児のスポーツマン」というイメージそのままの、礼儀正しい好青年であった。アッパレ三番福!

 トラブルもあったが、“福男スピリット”とでも言うべき素晴らしい精神を持つ3人が福男となったのは、これぞえべっさんの導き。本当に喜ばしい。


 有志団体から正式な「講社」へ。「開門神事講社」が発足して初めての神事が終わった。あまりの重圧に、心が折れそうな時もあった。しかし私を支えてくれたのはチムの存在だった。絶対に無様な姿だけは見せられない…その思いが私の力になった。本当にありがとう、チム。

 来年の開門神事は、またもや週末と重なっている。さらに多くの参加者が予想される。それでも我々は立ち向かわねばならない…あの赤き門を開け放つために。


今回、開門は開門神事講社が担当。
「開門」の号令は私の役。緊張した…。

 

平成21年 福男選び結果
一番福
外山 哲 (とやま てつ)
二番福
大迫 純司郎 (おおさこ じゅんしろう)
三番福
小藤 昇 (こふじ のぼる)

 

「あの日の朝焼け」インデックスへ

トップページへ