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大豊神社
   京都市左京区鹿ヶ谷

京都が好きだ。
私の一番好きな街・京都には、
一年に何十回も訪れている。

そして私が、その京都の中でも、
お気に入りのスポットが「哲学の道」沿いにある。

今回は私がこよなく愛する神社、
大豊(おおとよ)神社」を紹介しようと思う。

哲学の道沿いにある大豊橋。春に訪れれば、見事な桜が出迎えてくれる。

有名な「哲学の道」。一年中観光客が絶えることが無い。
そこにかかる小さな橋、「大豊橋」。
その向こうに「大豊神社」はある。

しかし、何故か大豊神社に足を向ける人は少ない。
観光地図でも、省略されていることもある。
大豊神社は、そんな神社なのである。

長く細い石畳の坂道を上って行く。やがて本殿が見えてくる。

元々は後ろの「山」そのものを祀っていた神社だが、現在は少彦名命(スクナヒコナノミコト)、応神天皇、菅原道真公の3つの神を合祀している。

かつては広大な神社だったらしいが、今はその面影も無く、こぢんまりとしものである。

本殿正面。少彦名命、菅原道真公、応神天皇を合祀する。
正直言って、本殿そのものはあまり珍しいものではない。

宗教的な視点を排除して見るならば、
この大豊神社における最大の「みどころ」は他にある。

その社は、本殿に向って右にある。
縁結びの神・大国社。日本でただひとつ、狛鼠が鎮座する社だ。
本殿右にある小さな「大国社」。
縁結びの神・大国主命(オオクニヌシノミコト)を祀る。
そこには、本来なら「コマイヌ(狛犬)」が鎮座している場所に、
なんとも愛らしい 「コマネズミ(狛鼠)」が。

これは、「古事記」で出てくる、ある神話から来ている。
(この社の祀神)大国主命が野火(山火事)で危機にさらされている時、
ネズミが現れて彼を救った・・・というのである。
コマネズミ・左。
豊穣・薬効を表す水玉(酒器)を抱える。また、「子宝」の意味もあるという。
コマネズミ・右。
抱えている巻物は 「学問」を表しているという

実はこの「コマネズミ」、あまり暦史は古くない。
昭和に入ってから製造・設置されたものなのだ。

で・・・その「コマネズミ」の好評に気を良くしたのか(笑)、
本殿左にある社にも、変わったものが鎮座していたりする。

本殿に向って左側にある、小さな社。
小さな愛宕社と日吉社が並んで祀られている。その前には・・・。
コマトビ。
「あに見てっだおめえ!」とでも言いたげ。
コマザル。
「大道芸人っす〜!」とでも言いたげ。

小さな愛宕(あたご)社と日吉社の前に鎮座する、
コマトビ(狛鳶)」、そして「コマザル(狛猿)」。
ここまでくると、素直に受け入れざるを得ない。


これらは他の神社では見られない珍しいもの。
そのため、どうしてもそればかりに目を奪われがちだ。

でも、ちょっと待って!
大豊神社は「花の名所」であることもお忘れなく!

(上)しだれ紅梅満開の頃。花は少ないが、静かな美しさを漂わせる。

(下)夕日に輝くしだれ紅梅。

本殿前にある「しだれ紅梅(こうばい)」。老木のため花自体は少ないが、若木には無い、何とも言えない美しさを持っている。
盛りのものだけが美しいのではない、その事を私達に教えてくれる。

このしだれ紅梅は、有名な北野天満宮の梅よりも格上とされ、「洛中一の梅」とも称される。

3月中旬ぐらいに満開になる。ただし、花をつけている時間はそう長くない。

一年に一度、是非見ておきたい梅だ。

しだれ紅梅と入れ替わるようにして、今度はしだれ桜が咲く。
しだれ紅梅と同じく、かなりの老木。樹勢の衰えは隠せない。

この頃、大豊神社が面する「哲学の道」は、桜が満開の時期だ。
華やかさでは、それらの桜には到底敵わない。
しかし、それらに負けないこの美しさはどうだ。


この二本の老木は、
私達の「美しさ」の基準を、根本から覆えすものだ。

そして忘れてはならないのが「椿(つばき)」。
実はこの大豊神社、京都でも有数の「椿の名所」である。

境内には様々な色・品種の椿が植えられ、
落ち着いた輝きを放っている。
見ごろは三月〜四月。しだれ紅梅としだれ桜の間くらいだ。

とはいっても、椿は品種によって咲く時期が異なるので、
春に訪れれば、必ず椿を目にすることができる。




実はこの「大豊神社」、
ある「意外な事」をきっかけにして、
一部の女性の間で、凄まじく有名になったらしい。

家庭用ゲーム機の女性向けゲーム、
「遥かなる時空(とき)の中で」という作品の中に、
大豊神社と「コマネズミ」が登場しているというのだ。


春に訪れた時、 そのゲームファンを対象とした、
スタンプ・ラリーが開催されていた。



(上)スタンプ・ラリー捺印所。ファンの方が残して行ったメッセージも小さく書かれていた。

(下)そのスタンプ。
そのゲームとは、過去の京都にタイムスリップした主人公の女の子が、色んな男性と恋をする・・・というストーリーらしい。

う〜ん、ステキな恋がしたいのは男性も女性も一緒なんだな〜。


で、そのスタンプ・ラリーの為に用意されたスタンプ捺印所と、そのスタンプ。むうう、美少年。
熱心なファンの方が多いらしく、私が神社に居た時間にかなりの方が押しにきた。もちろん、全て女性である。


こういった形で大豊神社が有名になるのは喜ばしいことだ。
だが、訪れる人が多いと、その中に心無い人が出て来たりする。「記念に」と、柱などに名前を彫ったり、落書きしたり。
京都の各所で、そういうのをイヤというほど見てきた。

そういう事が無いことを祈りたい。

 
大豊神社の宮司・小林清人(おばやし・きよんど)さん。私の度重なる取材にも快く応じてくださった。
先代宮司(お父様)がコマネズミ設置の発案者だという。

実は初めて訪れた時、私の足が悪いことを知り、無料で回復祈願して頂いた。何と感謝していいか解らない。
宮司さんはとても心の広い方で、
大豊神社の事について尋ねると、ひとつひとつ丁寧に教えてくれる。
神社を訪れた時は、是非お話してみよう。
ただしもちろん、失礼の無いように。
そして何より、感謝の心を忘れずに・・・。



そして最後に、私がイチオシの、
「大豊神社グッズ」を紹介しよう。
大豊神社は小さな神社なので、売店などは無い。社務所の呼び鈴を押して宮司さんを呼び、玄関先で購入することになる。 ちなみに社務所とは、宮司さんの自宅だったりする。

社務所入口に、絵馬やお神酒など、売っている商品が並べられている。

その中で、私のオススメの商品は・・・。
大豊神社オリジナル「ねずみ守り」である。神社のシンボルであるネズミをモチーフにしたお守りだ。

「お守り」というより、キーホルダー感覚で持てるのがオシャレだ。女性の誕生日プレゼントなどに贈ると、かなり喜ばれる。

ひとつひとつ手作りのために、全て微妙に形が違うのがいい。しかもひとつ500円という価格も嬉しい。


大豊神社参拝の際は、是非とも購入をお勧めする。

コマネズミ、コマトビ、コマザル。
花の名所。静かな境内。
私が京都の中でも、最も好きな場所。
肩肘張らず、ふっ・・・と立ち寄れる。
そんなこの神社が、私は好きだ。


京都を訪れた時、あなたもちょっと立ち寄ってみませんか?
可愛いネズミ達が、あなたが訪れるのを待っています・・・。

「大豊神社」
京都市左京区鹿ヶ谷宮ノ前町

<アクセス>

バス停「東天王町」または「真如堂前」下車、徒歩5分。

哲学の道沿いにあります。