▲TOPページへ

             <特別編>
エキスポタワー
       大阪府吹田市
「メタボリズム」の終焉@
12月10日

暦は「師走」、12月となった。


木々の葉も散り、いよいよ本格的な冬が来ようとしている。寒い日が続く中、この日は風が強く、一段と冷え込む気候となった。


久しぶりに見たエキスポタワーは、以前見た時よりも明らかに小さくなった。

さらに、作業をしているクレーンも、前のものより小型になっていた。切先付近を撤去したため、あんなに巨大なものは不要になったのだろう。


クレーンは活動を停止している。恐らく、強風のため、作業を見合わせているのだろう。

さて、エキスポタワーの下までやってきた。
あたりを見まわすと・・・。
いつもと同じ風景・・・。
いや???
何か、防護壁から見えている・・・???


あ・・・!あれは!!
キャビーン!!

いや・・・(-_-;)もとい・・・。


ガビーン!!

まさしく、タワーのキャビンである!!
見上げてみると、確かにキャビンがひとつ、無くなっている。
展望デッキ(白い三角の床)の上に、以前はキャビンがあったはずだ。

ついに・・・解体作業は、エキスポタワーの象徴でもある、キャビンに及んだのである。
(左)12月10日のタワー。
(上)以前のタワー。
比べてみると、 デッキ上のキャビンが無くなっているのが解る。
32年の時を経て、地上に降り立ったキャビン。
まるで疲れを癒すため、横たわっているかのようだ・・・。

まさか、こんなに近くでキャビンを見られる日が来るとは・・・。
解体が進んだ悲しみより、興奮のほうが大きい。


こうして置かれていると、テレビゲーム「パックマン」のモンスターみたいである・・・。

エキスポタワーのキャビンが降ろされた。
これは、とても大きな出来事である。

何度も言うように、エキスポタワーはただの「展望塔」ではない。
ひとつの、未来の住居コンセプトを形にした塔なのだ。

空中都市の形成。
巨大な建造物に、住居を付属させるというイメージ。
それは・・・「メタボリズム」という。


「あんなタワーをたくさん林立させて、上にユニット型の住居を組み合わせれば都市ができると考えた」
(朝日新聞・asahi.comより)


今や誰も見向きもしないその住居コンセプトは、まさに当時の描いた「未来」であった。
エキスポタワーからキャビンが降ろされる。
それはそのまま、「メタボリズム思想」の終焉を意味するのだ・・・。

警備員のおっちゃんに話を聞いた。
すると・・・。

「風が強くなければ、
 今日もひとつ、キャビンを降ろす予定だったんです」


私はタワーを見上げた。

キャビンのうちひとつが、本体から切り離されているのが確認できる。写真中央部、完全にフレームが切断されている。


「次は・・・あのキャビンか・・・。」




着実に進んで行く、エキスポタワー解体工事。
消えゆくのは、ただの鉄塔ではない。
高度成長期の日本の、思想、願い、そして夢・・・。

それらが今、「時代」という波に飲まれ、
姿を消そうとしているのだ・・・。