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             <特別編>
エキスポタワー
       大阪府吹田市
ヤノベケンジ -MEGALOMANIA-
「タワー・オブ・ライフ」全貌

2003年8月9日。ついに、待ちに待った日がやってきた。
美術家・ヤノベケンジ氏の展覧会。この展覧会に、「エキスポタワーの廃材を使った作品」が展示される予定なのだ。

国立国際美術館という「万博の遺構」で、エキスポタワーはどのような形で蘇えるのか。ずっとずっと待ち続けたこの時が、ついにやってきたのだ!

まずは一切の主観を排除し、その作品・・・「タワー・オブ・ライフ」がどのようなものであったか、をレポートしようと思う。

1.外観

まずは、その作品をスケッチしたものを見てもらいたい。

「タワー・オブ・ライフ」外観スケッチ。
(クリックで大きな画像が出ます)

パネルが円形に組まれている。使用パネルは全12枚。
赤塗装のものと、銀色塗装のものが交互に組まれている。パネルの組み方はエキスポタワーのキャビン時と変わらない。
以前に見た、ヤノベ氏に寄贈予定のタワー廃材の内訳は<ボールジョイント×5、銀色パネル×6、赤色パネル×6、キャビン丸窓×2>。つまりこの時点で、パネルは全て使い果たしたことになる。
パネルは、特に色などを塗り替えた形跡はない。ただ、明らかに劣化が激しかった部分は補修がなされているようだ。また、ボルトの穴などは埋められている。

上部から、内部にあるボールジョイントが半分ほど見える。ボールジョイントからはいくつもの棒蛍光灯が取り付けられているのが確認できる。

丸窓の部分には新たに、プラスチック製のカバーがはめられている。、半円形のとび出した形状。白色、不透明。ちょうど一般家庭にある、照明のカバーをイメージして差し支えない。
正面の一枚のみカバーが無く、そこから内部へと入ることができる。

2.内部

作品正面、カバーの無い窓穴から内部へと入る。
内部のスケッチ。

「タワー・オブ・ライフ」内部スケッチ。
(クリックで大きな画像が出ます)

パネルの内側は全て白色に塗り替えられている。
天井部分は吹き抜け、地面は何もひかれておらず、展示会場の地面そのままである。

中央に大きな円形テーブル。薄く水が溜まっている。
円形テーブルを支える柱には、エレベーターの位置を表すランプのようなもの。

円形テーブルの中央に小さな台が置かれ、その上にコケが載せられている。このコケは、解体直前のエキスポタワー内部に実際に生えていたものを培養したものだという。
台は一定時間ごとに、蛍光灯がつけられたピストンにより、ゆっくりと上下する仕組みになっている。その際、先述のエレベーター位置ランプも、台の高さに合わせて光っている階が上下する。

円形テーブルを囲むようにして、3本の柱が立てられ、その上にボールジョイントが載せられている。ジョイント切断面から、放射状に棒蛍光灯が取り付けられていた。


また、パネルとパネルの接合部分には、全て棒蛍光灯が取り付けられている。

3.作品配置

この「タワー・オブ・ライフ」、スタンドアロン(全くの個体)では無いのだ。ヤノベ氏の別の作品、「ニュー・デメ」及び「スタンダ」とリンクされている


配置図。
(クリックで大きな画像が出ます)
「ニュー・デメ」と「スタンダ」は、2002年に発表されたヤノベ氏の作品である。

この2つの作品は一対になっており、以前に見た時は向かい合わせに配置されていた。20回放射能を感知するたびに動作する仕組みになっている。
その動作とは、
うずくまっている「スタンダ」が立ち上がる→「ニュー・デメ」がおじぎをし、もどる→「スタンダ」が再びうずくまる
というものである。

今回、その「ニュー・デメ」と「スタンダ」は、「タワー・オブ・ライフ」中心に、そっぽを向くような形に配置されている。
そして、この2つの作品の動作に合わせ、「タワー・オブ・ライフ」の作品内にある、全ての蛍光灯が点灯する。2つの作品の動作終了後に消灯される。

4.ヤノベ氏による作品解説

展覧会初日、オープニングイベントで、ヤノベ氏による作品解説があった。それによると・・・、

ヤノベ氏は、エキスポタワー解体現場を訪れ、キャビンが降ろされる様を目のあたりにした。33年の時を経て、再び地上に降り立ったキャビン。氏はそれを「劣化のためにキャビンが降ろされた」のではなく、「熟れきった果実が地上に落ちてきた」と感じたという。

そこで、実際にタワー内部でコケを採取し、培養。そのコケを台に載せ、一定間隔で上下させることによって「再生」を表現したのだという。


以上が、エキスポタワーの廃材を使った作品、
「タワー・オブ・ライフ」の全貌である。