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平成24年(2012年)
 「開門神事福男選び」

 

 東日本大震災後、初めて行われる開門神事となった。日本を襲った未曾有の大災害。しかし発生から約10カ月が過ぎ、影響の少なかった関西では、早くも震災のことは風化しつつあった。


開門前、気合を入れる開門担当者ら

 まるで何事もなかったように行われようとしていた開門神事。 だが今回の「福男選び」は、例年よりも大きな意味を持つ。いや、持たさなければならなかった。

 

 

開門直後
開門神事の醍醐味!一斉に境内になだれ込む参加者たち。

 

第一直線をダッシュ
右端の男性が好スタート。追う後続!

 

先頭が本殿に到達!
大混戦、福男直前で転倒者も続出。

 

福男が決定
左から、三番福・中くん、一番福・福田くん、三番福・景山くん。

 

鏡割り!
飛びちる酒しぶき。本殿は歓喜の声に包まれる。

 

報道陣が殺到
この年も開門神事には報道陣が殺到。インタビューで福男を囲むマスコミ。

 

 

 約17年前、この西宮の地も“被災地”だった。1995年、開門神事からわずか1週間後の1月17日に起こった阪神・淡路大震災によって様々なものが崩壊し、多くの方が亡くなった。西宮神社とて例外ではない。本殿や赤門も大きな被害を受けた。しかし1年後の1月10日には、開門神事は例年通り行われている。それは日本全国からの支援があり、復興することができたからだ。

 「今度は私たちの番」

 復興した被災地から、復興しようとしている被災地へ、何かできないか。我々開門神事講社は「神事を安全・円滑に開門神事を執り行うこと」を使命として発足した。被災地の復興支援となると、講社の本来の目的外のことである。しかし少なくとも私の中では「例年通り」という言葉はなかった。考え抜いた末、今回は例年にはなかった2つのことを行い、被災地支援をすることを提案した。

 

(1)チャリティーグッズの販売

 開門神事はこれほどの知名度があるにも関わらず、参加者に無料で配布される参拝証、福男に贈呈されるハッピを除いて、オリジナルグッズは存在しなかった。作る必要もなかった。我々開門神事講社は営利組織ではない。神社から「神事を安全・円滑に運営する」のが目的の団体だ。


特設ブースで販売された「一番福ストラップ」

 だが、この国難の時、何か開門神事にできることはないか。関西では東日本大震災の影響も少なかったこともあり、早くも風化しつつある。このタイミングしかないと思った。今こそ開門神事のグッズを作るべきだと。そしてその収益を全て義援金として寄付することになった。

 そして完成したのが、開門神事神事初の公式オリジナルグッズとなった「一番福ストラップ」だ。開門神事の象徴でもある赤門に「一番福」の文字、裏面には「がんばろう日本」の文字を入れた。当初は売れるかどうか心配だったが、9日の朝から販売を開始すると予想もしなかった売れ行きを見せ、午後3時半ごろには用意していた1000個が完売した。


義援金寄付は神戸新聞で扱ってもらった

 のちに収益38万5000円は全額、神戸新聞厚生事業団を通じて、被災地にを寄付した。新聞社を通じて寄付したのは、寄付の金額等が紙面に記載されるから。目に見える形で、集めた思いを届けたかったからである。

 

(2)黄色い手袋の着用

 開門神事の開門のシーンは、全国放送のニュースで流される。もちろん被災地でも。その瞬間に何かメッセージを込めることができないか。そこで考えたのが、参加者に黄色い手袋を着用してもらい、被災地へのエールを送ることができないか、ということだった。


「福男カラー」の黄色い手袋

 なぜ黄色か。福男には「黄色いハッピ」が送られることになっている。つまり福男カラーといえば黄色。それに暗い早朝に映える黄色はうってつけの色である。もちろん、ただ黄色い手袋を配ればいいということではない。ちゃんと趣旨を説明し、それに同意してもらった上で黄色い手袋を配ることにした。


先頭グループの参加者は全員が手袋を着用してくれた

 そして本番。開門の瞬間、参加者は全て黄色の手袋を着用しているという「例年とは違う」開門神事を迎えることになった。こんなことで被災地の人たちの心が癒されるとは思っていない。ただ、今回の開門神事が「特別な意味を持っている」ことは伝えられたのではないかと思っている。

 

◇    ◇


  そして福男に選ばれた3人が、本当に素晴らしい男たちだった。一番福に選ばれた福田裕矢くんは、インタビューの際、何よりも震災のことを口にしてくれた。


運営側の目を盗み、行われた柵越しインタビュー

「東北の方、そして日本中が幸せになってくれたらいい」

 被災地にもボランティアとして行ったことがあるという福田くん。自分のことばかり語るような人間ではなく、苦しい生活を強いられている人たちのことを思うことができる人間が福男になってくれた。私は“えべっさんの導き”を感じずにはいられなかった。

 また、福田くんは福井県出身で、福知山市在住。“福づくしの福男誕生”と各マスコミが取り上げて話題となった。

 二番福・景山浩規くん、三番福・西慶祐くんも、話せば穏やかな心の男たち。三人は西宮神社の秋祭り「渡御祭」にも揃って参加し、福男としての仕事をキッチリと果たしてくれた。


「西宮まつり」渡御祭に参加してくれた福男の3人

 今回の開門神事を通じて、確信した。開門神事講社の仕事は「神事を安全・円滑に執り行うこと」である。もちろんそれは大前提。しかしそれ以上に大切な、本当に大切な使命があるのだ。

 広く、多くの人に「福」を与えることである。

 

平成24年 福男選び結果
一番福
福田 裕矢 (ふくだ ゆうや)
二番福

景山 浩規 (かげやま ひろき)

三番福
西 慶祐 (にし けいすけ)

 

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