▲TOPページへ

平成19年(2007年)
 「開門神事福男選び」

 

 この年も、当初から「クジ引き」によるブロック分けを実施することは決まっていた。これまでの2回は順調すぎるぐらい上手くいっていた。だが…そんな中、意外な事で「福男選び」の事前報道がなされた。

 『「福男選び」で写真照合導入へ」


「写真判定導入」と伝える各紙

テレビ番組でも大きく取り上げられた

 この「写真照合」は、私を含めた「開門神事保存会」で話し合われたものだった。

 参加者の過熱から始まったブロック分けだが、「クジで当たりを引いた人=最前ブロックに入る人」を徹底するため、前年度は身分証明書を持ってきてもらっていた。それをもっと簡単にできないか…と浮上した案だったが、一部の報道で過大解釈されてしまい、いつの間にか「写真照合」が「写真判定」に。各メディアで取り上げられることになってしまった。

 この案は結局は実施されることは無かったが、あらぬことで「福男選び」が注目を集める形になってしまった。

 

 

開門直後
向かって中央左の男性が好ダッシュ。右のユニフォーム姿の粂くんが続く。

 

第一ストレートで、猛烈に粂くんが追い上げる!

天秤カーブを抜けるとトップに立つ

後半はやや勢いが落ちるも、そのまま粂くんが逃げ切る

 

福男が決定!
左から二番福・奥野くん、一番福・粂(くめ)くん、三番福・東井くん

 

 

 粂くんが2連覇。その結果にかなり驚いた。以前は「○連覇」、「◇年連続の福男」なんてのが珍しく無かったが、クジ引きが導入されてからはその可能性は思いっきり低くなっている。毎年参加しているにも関わらず、まだ一度も当たりクジを引くことさえできない参加者もいるほどだ。

 そんな中、クジ引き導入後2度目の福男、しかも一番福、さらに2連覇。脅威的とも言える。走力はもちろんだが、何か“特別なもの”を持っているに違いない。粂くん、おめでとう。

 ただ…今回も神事の裏で、様々な“いけないコト”が行われた…という情報が入っている。確認まで至らずに“疑惑”どまりであったが、残念ながらそれが真実である可能性は高いようだ。

 あえてそれを追及することもない。もう何度も言及しているように、これは「神事」だからだ。明確なルールは無く、最終的には個々のモラルに委ねられる。…ともかく、近年はあまりにも目に余る参加者が存在するのは確かなようである。

 何はともあれ、粂くん本当におめでとう。


 2007年は、開門神事史上で最も報道が過熱した年であった。例年、報道陣は関西の地方局が中心。しかしこの年は4社もの在京キー曲(つまり全国放送を前提とした局)が集結した。だが、その報道陣が多くが、ほとんど前調べもなく取材に来ていたのは問題だと思う。関西地方局ならたいがい「開門神事はこういうもの」というコトを知っているのだが、東京から来た取材陣は「開門神事って、いったい何するんですか?」という質問を投げかけてくる。これには少し驚いた。

 そのせいもあるのだろう。報道陣は開門神事の“準備段階”であるはずのクジ引きに殺到した。興味はただひとつ…“誰が1番のクジを引き当てるか”。1番を引いたところで、スタート位置を最初に決めることができる…というだけなのだが。とにかく、報道陣はそれを撮るためにクジ引き会場に張り付いていた。

 そしてその時は来た。ある男性が当たりクジを引く。「当たり、1番!」――その瞬間、クジ引き会場は修羅場と化した。一気にテレビカメラが集結し、各レポーターが口々に「今の感想を!」と彼にマイクを押し付けた。もはやクジ引きどころではない。

 これには、開門神事保存会のメンバーの一人がキレた。

 「お前ら、ンなとこでインタビューすなアッ!」

 場が凍りついた一瞬であった。

 私はクジ引きの担当として、参加者に「当たり」「ダメ」の判定を伝える係であった。

 私の後ろには多数の報道陣がいたわけだが…私が神事に対し、大きな危機感を抱いた一幕があった。まだ1番クジが出ていない時点のことである。明らかに“冷やかし”と思われる女性がクジを引こうとした時である。後ろにいた報道陣のつぶやきが聞こえたのだ。

 「1番、引けっ!」

 ああ、この人たちは“神事を伝えるため”に来ているんじゃないんだ、と痛感した。彼らは神事などどうでもよく、とにかく面白い絵が撮れればそれでいいのだろう。後日、放送された神事の模様は多くが「こんな面白いイベントでハプニング続出!」的な構成であった。わかりやすく言うと、開門神事を伝える番組が、ニュース番組からワイドショーにシフトしているということ。

 開門神事はお祭り、多少のイベント性はあって当然。しかし「神事」であることが、あまりに軽視されている。今回、それを痛感した。

 無事に終わったかのように思われた、今回の「福男選び」。しかし私の中では、消化できない多くの疑問が渦巻いていた。そんな時、友人が私に声をかけてくれた。表面だけの慰めではない彼の言葉に、ちょっぴり楽になった。

 疲れ果てて自宅に帰り、睡魔と戦いながら…私は日記に、次のように書いた。この時の、私の率直な思いだった。

 来年もその次の年も、この雰囲気のまま、開門神事が続いていくだろう。ただ、私の思いの全てをぶつけて駆けた、あの頃のものとはすっかり変わってしまったのは確かだった。

 

 

平成19年度福男選び結果
一番福
粂 良太 (くめ りょうた)
二番福
奥野 始 (おくの はじめ)
三番福
東井 重樹 (とうい しげき)

 

「あの日の朝焼け」インデックスへ

トップページへ