平成18年(2006年) 「開門神事福男選び」 |
昨年から導入された「クジ引き」によるブロック分け。今回も引き続き、そのシステムを実施した。ただ前回の神事の際、一部参加者から「当選した権利が、裏で売買されるような危険はないのか」との指摘を受け、神社側と議論を重ねた結果、赤門前での集合の際、当選者は身分証明書を持参してもらうことになった。 正直、個人的には…身分証明書による本人確認には否定的だった。貴重品である身分証明書を、あのような混沌とした場所に持参して、紛失でもしたら。そして何より、神事としての意義が薄れ、競技会化が叫ばれている中、またひとつ“取り決め”ができてしまうことになる。 ちなみにこの年、私はクジ引きの係をすることに。 クジ引きした参加者に「ダメ!」やら「当たり!」やら言う役なのだ。なかなか責任重大…だが、なんとかトラブルなく終えることができた。 |
開門その1 |
開門その2 |
「天秤カーブ」入口。早くも独走! |
後半は詰め寄られるも、そのまま一番福! |
福男が決定! |
前回から本格導入された、スタート場所決めの「くじ引き」システム。これにより数年前までよく見られた「○年連続の福男」なんていうコトが困難になった。有力な参加者でも、くじ引きの時点でハズレてしまえばその場で終わり。当たりを引いても、ベストの地点からスタートできる保証はない。 福男選びには、ふたつの大きなジンクスがある。ひとつは一番有利と言われている「最前列中央からのスタートでは勝てない」、そしてもうひとつは「初参加では勝てない」。前者は過去、何人もの参加者が絶好スタート位置から独走→転倒、という場面が何度も見られたことから生まれたジンクス。後者は、参道があまりに特異形状なため、コースどりなどに経験が必要…と言われているのである。 さて、今回の一番福、一番福に輝いた粂(くめ)くん。完全な初参加であるにも関わらず、ほぼ独走に近い形で一番福を勝ち取った。ジンクスを見事に打ち破ったのである。
無事に終わったかに思える、今回の福男選び。しかし、課題も残った。
1、はばタン 何のこっちゃ?と思うかも知れない。「はばタン」とは、2006年の夏にに行われた兵庫国体のマスコットキャラクター。兵庫県はこの国体のPRにやっきになっていて、ほぼ一年間にわたって各地にはばタンを送り込んできた。 まぁそれはイイのだが、そのはばタンがナント、福男選びにも登場した。例年は福男認定式の直後に、新たな福男たちの手による鏡割りがあるのだが…なんと今回はその間に「はばタン贈呈式」たるものが入ってきた。はばタンの着ぐるみが登場し、福男たちにはばタンのぬいぐるみ贈呈…。 アホか! 福男の認定式から鏡割りまでが「神事」としての一連の流れのはず。その間にこんなショーを挟むとは。ぶっちゃけ、福男選びが「広告」として利用されたことになる。 以前は福男選び直後、スポンサー企業による「福引抽選会」なんてものが開催されていた。しかし、神事としての原点に戻るような形で廃止された。
2、参加者の質の低下 数年前から感じているこの問題。そして昨年あたりから、あまりにも酷いのが「コスプレ参加者」である。 もっとも、思い思いの衣装を着て参加する…ということはずっと前からあった。しかし、あくまで福男選びの参加者としての立場は守っていた。 だが、ここ数年に出現した輩は違う。ハナから神事に“参加”するつもりはなく、神事直後の認定式や鏡割りの際、奇抜な衣装でわめき散らし、福男たちに罵声を浴びせる。彼らにとって神事などどうでもいいのだ。自分達が楽しみ、目立ちさえすれば。 コスプレが悪いと言っているわけではない。ただ、TPO(時と場合)を考えろ、ということ。 今さら確認するまでもなく、この福男選びは「神事」である。本殿にたどり着くことは、厳密には「お参り」しているのだ。こんな姿で参加していいのか、こんな行動を取っていいのか…、それぐらいの判断はできるはず。 しかし最終的には、個々のモラルに訴えるしかないのが現状なのだ。 ただ、明らかに危険の伴う姿での参加は、今後は絶対に控えてもらう。今回、最前ブロックに当選していた女性の一人が、転等時に大怪我の恐れのある服装で来ていた。警察側から参加を止められたが聞き入れず、最終的には「自己責任」という言葉で、そのまま参加した。…結果、その女性は予想通り開門直後に転等。大事故は免れたものの、その女性が怪我したのはもちろん、後続の参加者も巻き込まれる事態となった。
3、「ブロック分け」の意義 今回、一部参加者がクジに外れ、後ろのブロックからのスタートだったにも関わらず…スタート前の混乱の中で、前のブロックに潜り込む…ということがあったようだ。 ここでややこしいのは、クジ引きとはあくまで「安全のため」に行われているのであって、福男になるための「権利」ではないということ。極端な話だが、開門後に最前ブロックの108人が全員転倒し、後ろのブロックから走った人が一番になったとする。しかしそこで「クジに外れたのだから、福男の権利はない」というのは違うだろう。クジに外れたとしても、3番以内に入れれば福男に違いはない。 だが、それと今回のことは違う。クジを引いた人の多くは外れクジを引き、涙をのんだ。中には神事の参加さえ諦めて帰宅した者もあったが、「それでも走りたい」と、後ろのブロックから懸命に駆けた人も居た。今回の「潜り込み」は、そういった人たちの思いを踏みにじる行為である。
「福男選び」に参加する人たちにお願いしたい。一度、胸に手を置いて静かに考えて欲しい。神様の前で行われる「神事」に参加する人間として、自分の服装は、振る舞いは、そして心構えは、“恥ずかしくない”ものなのか。もちろん十日えびすは“お祭り”、楽しく参加するのは大いに結構だが、度を超えるとそれは「バチ当たり」なだけである。 最後にもう一度念を押しておく。これは「神事」なのだ。 |
平成18年度福男選び結果 |
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一番福 |
粂 良太 (くめ りょうた) |
二番福 |
吉田 光一郎 (よしだ こういちろう) |
三番福 |
奥村 康三 (おくむら こうぞう) |