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平成9年(1997年)
 「開門神事福男選び」

 

 長い歴史を持つ「福男選び」、自然と発生した様々な名勝負。 その中でも「森本・善斉対決」は、今も語りぐさとなっている。二人の対決はそれまで4回あった。

一番福
二番福
1993年(平成5年)
森本
善斉
1994年(平成6年)
森本
善斉
1995年(平成7年)
善斉
森本
1996年(平成8年)
善斉
森本

 当時の福男選びは、まさにこの二人の独壇場。5回目の対決になるこの年はメディアも例年以上に注目した。そんな中、密かに参加を決めた平尾。目にするもの全てが新しく、神事の魅力に引きこまれていった。

 そして…。

 

スタート直後
 この年、最前列中央を取っていたのは、地元の中学生(先頭の黒いウインドブレーカー)。そのすぐ横に善斉さん(青タイツ)、森本さん(白ジャージ)。私はその後ろ(赤ハチマキ)だった。

 

ゴール後、本殿上で記念撮影
 向かって中央が一番福・善斉さん、左が二番福・平尾、右が三番福・森本さん。凄まじく興奮していたのを覚えている。

 

初めて参加する「福男選び」。それは、私をこの行事に入れこませるには十分だった。

門の前で何時間も待ったこと。
どこからともなく、差し入れが回って来たりしたこと。
そして何より、午前6時、門が開け放たれた時の興奮。
その全てが、私にとって強烈な記憶として刻まれた。

私は初出場ながら、二人の中に割って入り、二番福となった。だが・・・で、ある。このあと、あんな事件が待ち構えていようとは、この時は思いもしなかった。

当日の夜、この「福男選び」の模様が、「ブロードキャスター」という、かなり高視聴率な報道番組でかなり大きく紹介された。善斉さん・森本さんの二人を年末から追っているという、まさに二人のための特集であった。

そして、「福男選び」のスタート直後の映像の時…!!!
「その時、森本の肩に、後ろの走者の手が!!!」というナレーション!!
その後ろの走者とは・・・間違いなく私だった…。
特集は、「後ろの走者に妨害された森本は実力を発揮できず、今回も善斉に勝てなかった。しかし、来年、またここで会おう!!」
…と、終わっていた…。

つまり・・・私は二人の対決に水をさした、ただの悪役として扱われていたのだ。絶句した・・・。こんなことになるなんて・・・。この時の私の気持ちは、誰にもわかるまい。

5日後、私は成人式に出席する前に、スーツ姿で西宮神社に出向いた。あまりにも傷ついた私は、西宮神社に「福男」の称号を返上しに行ったのだ。
しかし、宮司さんは私の話を聞き、
「もう終わったことだし、来年にまた悔いが無いようにしましょう」
と諭され返上を思い留まり、その足で成人式会場に向かった。悔しい…ものすごく悔しかった。

しかし、私を救ってくれたのは、誰でもなく…私が「妨害した」はずの森本さん本人だったのだ。
あまりにいてもたってもいられなくなり、後日に森本さんに連絡を取り、「スタート時に、森本さんを妨害してしまって…」と、謝ったのだ。
そしたら、森本さんは、
「お前が二番をとったんやから、胸を張ったらいい!!気にすんな!!!」
・・・と、言ってくれたのだ・・・。
この時、心から森本さんに感謝した。

初めての参加、二番福、愕然としたテレビ放送、森本さんの優しさ…。
たくさんの経験をした。
私は、絶対一番福を取ることを決心する。このままじゃ…・終われない!!!
これが、私の福男に賭ける思いの原点だ。

 

平成9年度福男選び結果
一番福
善斉 健二 (ぜんさい けんじ)
二番福
平尾 亮 (ひらお りょう)
三番福
森本 晋由 (もりもと くにゆき)

 

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