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その1

「難関コーナー」騒動の結末

◆「福男選び」に新たな難所?

 今年の開門神事「福男選び」の話題の中心は、意外なトコロから現れた。夏の盛りの頃、次の神事までまだ半年ほどもあるというのに“ある話題”が新聞に掲載された。


夏に掲載された記事

「福男選び、より難しく コース変更、カーブ鋭く」

 今年に入ってから建設が進んでいた祈祷殿(きとうでん)がいよいよ完成。それに伴い参道の石畳が一部敷き直され、社務所前のコーナーが例年よりも厳しく!というものだった。

 この「コースが若干変わる」というのは、祈祷殿建設が始まる前から分かっていたことで、なんで夏にこんな記事が出るのか不思議でたまらなかった。しかし、本当の混乱は数カ月後に訪れる。

◆こぞって難所誕生を取り上げる

 冬になり、福男選びが近づくと、夏に出た記事を見た各新聞社がこぞって“後追い記事”を掲載。ネットにも配信されて話題を呼んだ。私のところにも多くの電話がかかってきた。その多くはやはり「厳しくなったコーナー」についての見解。そのたびに私は「今回が参道が変わって初めての神事、影響は未知数」と前置きしながらも、ハッキリとこう答えてきた。

 「そんなに変わらないと思います」

 正直、なぜここまで大騒ぎするのかが分からなかった。確かにコーナーの角度は厳しくなったが、セオリーは最内を走ることで、少し変わったからといって走るルートが変わるわけがない。

 だが12月に入ると、テレビ局からも多くの問い合わせがかかってきた。今回の神事の焦点は、あのカーブが全て…といった感じもあった。さらに警察からも連絡が入ってきた。「あのコーナーは大丈夫なのか?」。あまりに各新聞で騒がれているので、大事故が起こるではないかと心配したのだろう。大丈夫もヘチマも、あの程度の変化で神事中止になるわけがないのだから、少しウンザリしてきた。

 恐らく当日、多くのテレビカメラがあのコーナーに張り付き、転ぶ参加者をとらえようと待ち構えるのだろう。

◆意外な結末…騒ぎすぎた?

 …しかし。神事を間近に控えた7日、神社に出向いた私は意外な光景に出くわすことになる。


コーナー内側に板が…


  …なんだこれは?こんなの今まで見たこともない。改修されたコーナーには屋台はなく、内側の砂利部分には板が張られている。これは一体…。神社関係者に聞いてみると。

 「警察がこのコーナーで転ぶ人が多くなるんじゃないかと心配して指導が入った。角にあった屋台にもどいてもらった」

 なんという過保護。つーか、コーナーは先のほうまで見渡せるようになり、いままでカーブを曲がると急に眼前に現れた「審判のクスノキ」もマル見え。確実に、例年よりも走りやすくなってるじゃないか。もしかしたら、濡れた木の板で滑って…なんて可能性もないわけではないが、少なくとも“カーブを曲がりきれずに転倒”なんておマヌケな奴はいないだろう。ここを押さえようとしてたテレビ局の皆さん、現地へ来てきっとガッカリするに違いない。


奥のクスノキまで見える…

 まさに「大山鳴動してネズミ一匹」。あれほど騒がれた「コーナー狂騒曲」は意外な形で、本番を迎える前に結末を見たのだった。