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その1

「写真判定導入」報道の裏側

◆「転ばぬ先の杖」のはずが…

 平成18年(2006年)12月のある日。私はパソコンを何気なくパソコンを開いて驚いた。思いもかけないニュースが、かなり大きな扱いで配信されていたのだ。

 『「福男選び」で写真照合導入へ』

 某新聞社が配信したこのニュースはやがて、ヤフーのトピックス(トップページに見出しが掲載される記事)にまで取り上げられることになる。実はこの「写真照合」はこの数日前、私を含めた「開門神事保存会」で話し合われたものだった。

 「福男選び」は参加者の増加と“場所とり”の過熱の対策として、平成17年(2005年)からブロック分けを行い、最前ブロックからスタートする参加者を決めるクジ引きシステムを導入している。しかしこのシステムには懸念材料がある。それは「当たりクジの譲渡が行われるのではないか」ということだ。

  毎年、数百人の参加者がクジ引きするため、当たりクジを引き当てるのは、とても低い確立である。そこで友人など大勢引き連れてきて、一人でも当たればその権利を譲ってもらおう…と考える参加者がいるかもしれない。さらには、当たりクジの売買なども行われる恐れもある。

  あくまで、最前ブロックからスタートできるいのは「当たりクジを引いた当人」。他の人へ権利を譲るようなことがあってはならない。

  クジ引きシステムが導入された平成17年には、こういったことは確認されなかったが、あくまで“転ばぬ先の杖”として、対策を考えようということになった。その結果、平成18年は身分確認を行った。門前に再集合の際、身分証明書を持ってきてもらい、クジ引き当選直後に書いてもらった名簿と照合。本人と確認してからスタート位置についてもらう。

 だが、私はこの方法に反対であった。免許証等の身分証明書はいわば“貴重品”。これから全力疾走しようとしている人たちなのだ。スタート時には押し合いにもなる。紛失する危険性も大きい。

 そこで、参加者には何も持ってきてもらわず、もっと簡単に照合できる方法はないか…と考えた。そして出てきたアイデアが、当たりクジを引いた人の顔をデジカメで撮っておく、ということであった。そうすれば現地集合の際、身分証明書よりも簡単スピーディーに、確実に、しかも安全に“本人確認”することができる。

◆マイナスイメージのコメント

 ところがある新聞社の記者が、西宮神社の関係者からこのことを知り、冒頭の記事を出したのだ。正直、我々「開門神事保存会」も、写真撮影に関して認識が甘かったのは認めざるを得ない。だが…それ以上にこの記事には、神事に対する“悪意”があったのではないか、と思う。それを裏付けるのが添えられているコメント。大阪の今宮戎神社に関わっている人間からコメントを取っているのだ。

 ハァ?こういう時って、その方面に詳しい人に聞くものじゃないの?開門神事とは全く関係ない人間じゃないか。しかも今宮戎といえば、えびす神社の中で最も有名で、本社・西宮神社の“ライバル”ともいえる神社。そこに関わっている人間からコメントを取れば、マイナスイメージの言葉が出てくるのは明白である。

 そして当然ながらそのコメントも“識者の見解”とはかけ離れた…関門神事、さらにはその参加者をバカにするようなものであった。

 「この過熱ぶりは人を出し抜いてでも一番に、という時代の風潮。苦肉の策やね」

 この記事を目にしたスポーツ新聞社が1社、夕刊紙が1社、同じように記事を出した。どちらも見出しは「写真照合」ではなく「写真判定」になっていた。「照合」と「判定」。微妙なニュアンスだが、「判定」という言葉になったことで、念のため…というニュアンスは消え、内容も“ここまでする必要が出てきた”的なものになってしまった。

 結果的に、話だけが大きくなってしまい、我々は検討していた「写真照合」を見送ることになった。小さな話も書き方によっては簡単に大きくされてしまう。今も「福男選び」の報道の際、平成16年度のことを持ち出すメディアも多い。あの「福男騒動」は、まだまだ尾を引いているのだ…と実感した出来事であった。