早まる「開門待ち」に歯止め |
05年度の「福男選び」に先がけ、神社側から「不正防止策」として、注意書きの看板が立てられることになった。内容は次の通り。
一、表大門は一月十日午前0時に閉門し、午前6時に開門します。 二、早くからの場所取りは参拝者の迷惑となりますので禁止します。 三、表大門付近でのテント設営、火気の使用は禁止します。 四、開門時の事故防止のため、押し合うことなく係員の支指示に従って下さい。 五、転びやすい履物や泥酔状態での走り参りは禁止します。 六、参拝者に参拝証を授与します。(但し数に限りがあります) 西宮神社 某新聞で神社の方の「このような看板の設置は初めて」みたいなコメントが掲載されていたが、意味の取り方がちょっと違う。内容は少し変わってはいるが、04年度もちゃんとこのような注意事項があり、「張り紙」が赤門門前に張られていた。ただ、04年に張り紙が出されたのはあまりにも遅く(正月3が日が終わってから)、参加者に充分に伝わったとは言い難い。そこで神社側は、12月中にマスコミに対して「看板設置」を知らることで、メディアを通じて注意書きを広めることにした。 マスコミは「前回の騒動を受けて、神社側もついに動いた!」みたいな報道になっているがけれど、このような注意が出たのは初めてではない。決してマスコミ報道を鵜呑みにしないように。 今までと明らかに違うのは、その決まりが厳格化されたことだろう。04年にもこれらの決まりはあったはずなのに、実際には3〜4日日前から泊まりこんでいた参加者がいた。なぜ決まりは破られたのか。それは、神社側が注意書きに対して、あまりにルーズだったからである。 今回は04年の反省を含め、今回は早くから、マスコミを使って通達を出した。「早くから」の線引きは当初は明確にされていなかったが、神事が近づくにつれ「一月十日午前0時に集合」ということが今回のルールとなりつつある。 「福男選び」の激化に伴う問題のひとつに、早過ぎる「場所とり」があった。 「福男選び」はみんな同じ位置からヨーイドン、というわけではないので、当然ながらスタート位置が重要になってくる。04年度までは「早く来た者から好きな位置からスタートできる」という暗黙の了解があったので、神事の激化に伴い、参加者の集合は年々早まる一方だった。1990年代後半までは、9日の夕方から参加者がちらほら集まり出す…という状況だったが、2000年代に入った頃から一変。2〜3日前から門前に来て、テントを張って野宿する者も現れた。 これがもし、閉まっている門の前で待つのなら、そう問題にならなかったかも知れない。だが、神事の前日・9日は「宵えびす」の祭りが行われていて、門は開いたまま。参加者は「門の横」で待つことになっていた。 だがここで問題が起きてくる。まずは防犯上のこと。夜になればあのあたりは真っ暗。何か事件に巻き込まれる可能性もある。神社側としては「門外」でのことだが、何か問題があれば必ず神社へ責任が来る。さらに、野宿する参加者の中にはバーナーを持ち込み、キャンプさながらに鍋パーティーを催すグループも現れた。赤門、また西宮神社の土塀は、国の重要文化材に指定されている。当然ながら火気厳禁。その近くで火を扱うのは当然ながら×である。また、9日も祭りが行われているのに、参拝客の目の止まる場所に、テントや寝袋が並ぶのも好ましくない。参拝客の中には、それを見て眉間にシワを寄せる者もいるだろう。 そしてもうひとつ。「神事」としての問題である。先にも書いたように、神事の原則は「10日午前0時に閉門、同日午前6時に開門」である。もっと意味を掘り下げると、「神事が始まるのは10日午前0時から」。それ以前から参加者が来ていること自体がおかしいのである。今までも同じような意見もあったが、参加者からの「早く来るのは熱意があるから。それを摘み取るようなことはやめて欲しい」との声を尊重していた。 今回、参加者の集合時間を「1月10日午前0時」に定めたのは、とにもかくにも、福男選びが「神事としての形に立ち返って欲しい」という神社側の思いが込められている。 参加者の熱意よりも、神事としてのの原点へ。今回の神社側の対応を、私は高く評価したい。 |