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新たな沖縄の足「ゆいレール」

 

2003年8月15日に開業した、沖縄モノレール・通称「ゆいレール」。

開業間もない同月24日、沖縄を訪れていた私は、その「ゆいレール」に乗車することができた。
そのレポートをかねて、感想を書こうと思う。

当たり前なのだが、車体は真新しく、とても綺麗だ。
沖縄の人は「モノを大切にする」のが当たり前なので、関西のように「あっという間にボロボロに・・・」、なんてことはないだろう(^^;。
開業して間もなく、しかも夏休み期間中だったこともあり、ゆいレールは超混み。キャアキャア騒ぐ子ども達、車内を興味深く見回す地元のご老人達。当初は「誰も乗らない」と評されていたゆいレールだが、見る限りは幸先のいいスタートを切ったようである。

問題はこの「開業バブル」のあと。物珍しさがなくなり、夏の観光客が去ったあと、ゆいレールは生き残れるか、ということである。車社会が定着し、唯一の「公共交通機関」とも言える路線バスでさえ、県民の乗車率はすこぶる悪い。
そんな沖縄文化の中にあって、ごくごく限られた区間しか走らない「ゆいレール」を、果たして県民は利用するのか??
下馬評では「赤字確実」「すぐに廃れる」との、厳しい予想が飛び交っているのだが・・・。

私の率直な感想としては、「結構イイんじゃない?」だった。今のように連日満員・・・とはいかないだろうが、これから先、安定した乗車率で利用されていくのではなかろうか。
なぜなら、ゆいレールには「色んな人に、便利に利用してもらいたい」という苦労が随所にみられるのだ。
また、路線バスと比べ、遥かに優れている部分が多いのに気づく。

では、そのゆいレールのアドバンテージを書いてみよう。
まずは、ゆいレールのライバル(?)、「路線バス」との比較から。

<ココが路線バスより優れている!>

1.定時発車、定時到着

沖縄のバスはとにかく「時間にルーズ」。
10分、20分の遅れは当たりまえ。さらに夕方には凄まじく道が混むので、バスに乗れても全然進まない・・・なんてザラ。その逆もしかり。
本土のバスも多少の遅れが生じることはよくあるが、沖縄のバスはその比ではない。
これは「うちなータイム」とも呼ばれる、沖縄独特の「時間に縛られない」文化が影響しているのかも。
だが、ゆいレールにはそれがない。基本的にキッカリ時間に発車・到着。これは嬉しい。

2.先進の「ユニバーサルデザイン」

今、全国各地の路線バスは「ノンステップバス」の採用が広がっている。ノンステップバスとは、車椅子やお年寄りの利用者に配慮した、乗降口に階段がないデザインのバスである。多くの旅行者が集まる観光地を中心に、急速に導入されている形態のバスである。ここ近年に広がりつつある「バリアフリー思想」の象徴ともいえる。
逆にいうと、ノンステップバスが採用されていない土地は、あまりに考えが遅れているとしか言いようが無い。

だが実は、沖縄の路線バスには「ノンステップバス」が導入されていないのだ。いや、あるかも知れないのだが、私は見たことが無い。ずっと注意して見ていたのだが、ついに一台も見かけなかった。どれもこれも、観光バスのお古のような感じである。
利用者が少ない、ということもあるいかも知れないが、今の沖縄のバスは、あまりに時代遅れ・・・と言わざるを得ない。

一方のゆいレールは、各駅にエレベーターが設置され、障害者・高齢者にも楽に利用できるように配慮されている。どうやら、駅のエレベーター設置率は100%なようだ。これは嬉しい。

「バリアフリー」・・・今まであった障壁を取り除く、という思想をさらに進めた、「ユニバーサルデザイン」・・・当初から全ての人に優しく設計されているのだ。

正直、バリアフリーの設備が遅れている沖縄において、このゆいレールの設計は高く評価できる。


「那覇空港駅」のエレベーター。
なんと全駅、エレベーター設置率は100%だ。

3.「料金前払い」の安心感

沖縄のバスは、全て区間課金製。乗車時に整理券を取り、前方の掲示板の料金表と自分の整理券の番号を照らし合わせ、降車時に料金を支払う。
時々刻々と変わってゆく料金表。料金を用意していて、さあ降りるか!と思った瞬間に料金表が変わり、アセった場面も数多い。
またバス内では高額紙幣の両替はできない。あらかじめ10円玉を多めに準備しておかねばならないのだ。

一方の「ゆいレール」。乗車時に、この駅までならいくら・・・というのがハッキリしているので、料金支払いにバタバタする必要は無い。券売機では高額紙幣も使用OK。

 

「ゆいレール」は、「移動区間」以外のほとんどのコトにおいて、バスよりはるかに便利だといえるのだ。


「那覇空港駅」の自動券売機上にある料金表。
非常に解り易く表示されている。

そして、実際に「ゆいレール」に乗って、感心したことをいくつか。

<ココがいいね!ゆいレール>

1.電車に慣れない県民への配慮

今まで、沖縄には電車がなかった。戦前には小規模ながら存在していたらしいが、戦争で破壊され、「ゆいレール」はそれ以来の電車になる。つまり多くの沖縄県民にとって、電車は未知の乗り物。「はじめて電車に乗る」人も多いのだ。しかも長寿の島・沖縄である。かなりのご高齢の方も多い。電車の乗り方が解らず、二の足を踏む人も多いだろう。

そこで、各駅で無料配布されている「ゆいレール便利帳」である。
電車はどうやって乗るのか、切符の買い方から乗り方まで、とても分かりやすい言葉で説明されている。
っていうか。「ゆいレールに乗るには」というページで、

「まずは改札口まで行こう」
まずは階段やエレベーター、エスカレーターを使って2階まであがり・・・

って・・・・(;^_^A。いくら親切でもそこから説明するか?とツッコミたくなるが、ご高齢の方々にとっては、親切すぎるぐらいが丁度いいのかもしれない。


各駅で無料配布されている「ゆいレール便利帳」。
ちょっと戸惑ってしまうぐらい親切だ・・・。


2.電車の進行状況が良くわかるパネル、車内放送

「ゆいレール」の乗車扉上部には、こんなパネルが取り付けられている。

間もなく到着する駅のランプが点灯、電車の現在地の、進行方向矢印が点滅する。
今、どのへんにいるのか。どの方向に、どの駅に向かっているのか。非常にシンプルで解りやすい。私が良く利用するJR西日本では、同じ位置に電光掲示板が設置されているが、広告がひっきりなしに流れて分かりにくい。
こういったシンプルなパネルは、お年寄り、さらには聴覚障害を持つ方にとって嬉しいであろう。

また車内放送も、しっかり・はっきりしたアナウンスで、しつこいぐらいに親切だ。
決して本土のJR線のように、ゴニョゴニョした聞き取れないアナウンスなどしない。
形式だけではない、きちんとした車内放送には好感がもてた。

3.徹底された「沖縄カラー」

沖縄県民は、地元の文化をとても大切にする。県外産物も多く入ってきているが、やはり強いのは「地元ブランド」。
「ゆいレール」の座席は沖縄の空・海をイメージした青が使われ、模様も琉球かすり。さらに各駅到着時には、車内放送で沖縄民謡のようなメロディーが流れる。各駅の装飾も、琉球王朝を思わせるものが多い。
こういった「沖縄カラー」へのこだわりは、沖縄県民にはもちろん、観光客にも嬉しい。

なんか「ゆいレール」に対してベタ褒めの私だが、「これはちょっと・・・」と感じた部分もあった。

<ココはちょっとなあ・・・。>

1.電車とホームの間隔、及び段差

先に書いたように、ユニバーサル・デザインが進んでいる「ゆいレール」。
しかしながら気になったのは、乗降車時の、電車とホームの間隔、及び段差。

実際に乗るとき、ホームに対し、電車の位置が「遠い」のに驚いた。小さな子どもの足なら、ズッポリはまってしまうぐらいの間隔だ。

乗車時に下を見ると、はるか下の地面が見えてけっこう恐い。この距離感は、お年寄りには辛いかもしれない。そして「段差」。ホームに対して、電車の位置がちょっと高く感じた。

横風対策として、ホームと電車の距離を狭くするのは難しいかもしれない。だが、段差はもう少し小さくできなかったのか。走る電車の種類はひとつ、もっとフラットにすることもできたはずだ。

この点は今からすぐに改善・・・とはいかないと思うが、ちょっと残念に感じた。

 

(左)「ゆいレール」乗車時のショット。
ホームと電車の間隔、及び段差が結構ある。

2.「特殊割引運賃」とは?

「ゆいレール」には、どうやら障害者割引が存在するようである。だが、切符売場に明確な運賃は記されておらず、運賃表の下に小さく「割引運賃をご利用の方は、窓口にてお問い合わせください」との注意書きがあるに過ぎない。
そこで、窓口に聞いてみると…。

「障害者の方は、運賃が半額になります」

とのこと。しかし、その先の言葉には驚いた。

「小人運賃の切符を買って下さい」

これは無いと思う。
まず、割引運賃があるのであれば「窓口に…」などと書かず、ちゃんと明記すべきではないだろうか。
それに、割引率が「普通料金の半額=小人料金=障害者特別割引料金」であったとしても、この場合はちゃんと「特別割引券」を用意すべきだと思う。小人運賃切符では当然、自動改札に通すと、小人運賃を示すランプが点る。これはちょっとおかしい。
料金が同じだからといって手を抜かず、ちゃんと窓口で「特別割引券」を発行するようにして欲しい。

 

とにもかくにも、ついに走り出した「ゆいレール」。

私が乗った限りでは、この便利さに県民が気づけば、この先も利用者は付くと思っている。だが、問題はその「県民が気づくかどうか」である。今まで電車が無かった土地なので、その恩恵を認識するには時間がかかるかも知れない。

「ゆいレール」、沖縄の新しい「足」として定着していって欲しいものである。

 

 

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