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コンサート「復興の詩」vol.9

 

平成15年4月27日。

いよいよ、待ちに待ったコンサート「復興の詩」当日だ。
私が大ファンの「河島英五」が呼びかけ人となって始まった、
「阪神・淡路大震災復興支援コンサート」。
そして私にとって、初めてのライブコンサート参加となる。

この日をどれほど待ちわびたことか…。
天候は快晴。まさに「復興の詩」に相応しい春の陽気だ。

はやる気持ちを抑えつつ、会場「神戸文化ホール」へ向かった。
準備が遅れているらしく、開場を待ちわびる人たちでごった返していた。

会場に入ると、緞帳(どんちょう)には巨大な英五さんの絵が。
そしてかすかに流れてくる河島英五ナンバー。
河島英五が亡くなってからは、彼の「追悼コンサート」も兼ねているとは聞いていたが、
ここまで「英五色」が強いとは思わなかった。

ついに「復興の詩」の幕が開く。
舞台には・・・巨大なスクリーン。
流れてくる、聞き覚えのある曲…私が河島英五ナンバーで一番好きな曲、
「旅的途上(たびのとじょう)」だ!
そして、スクリーンに映し出されたのは・・・在りし日の河島英五!
観客からは「英五ーーー!!」の声が飛ぶ。
そうなんだ。河島英五が亡くなってから2年。
しかし、「復興の詩」を主催していた彼の思いは今も受け継がれ、
観客の多くは、その面影を見るため、ここに来ているのだ。
コンサート開始1分から、早くも感動モード。

そして、やがて現れる出演者たち。
入れ替わり立ち代り出てくる出演者は、本当にバリエーションに富んでいる。

登場順は記憶の限りだが、出演者の短評を。
各出演者、数曲歌ったが、詳細は割愛。
その中でも印象的だった曲をチョイスして取り上げている。

 

◆アナム&マキ
トップバッターとして登場。
一曲目は、英五さんのカバー曲「月の花まつり」だった。
正直言って、出演者の中で最も興味を持ったのがこのデュオ。
ギターの腹を軽く叩く、独特のリズムの取り方が気持ちいい。

また、第二部では、アナムがソロで「崩れた壁」という曲を独唱。
英五さんが生前、「この曲で認められたい」と言っていたという。
小さな体から搾り出すように、裏声を巧みに使う姿は感動的だった。

今まで「河島英五の娘」として見ていたが、
これからは「いち・アーティスト」として応援していきたいと思った。

◆円広志
登場した時、客席から「歌わんでいいぞ〜」というヤジが聞こえたが、
円さんは「歌うわアホ!!」と切り返し、会場が爆笑。
あのヤジはどうかと思ったが、それを笑いに転化させるのはさすが。
持ち歌を数曲歌った。
後から思えば、出演者の中で「英五さんゆかりの曲」を歌わなかったのは円さんだけ。
しかも、バックバンドを大勢引き連れての出演だった。
TVではタレントとしての活動が中心の円さんだが、
これは「歌手・円広志」としてのこだわりだったのではないか。

◆イライジャ・リーパイ
出演者の中に名前を連ねてはいたが、正直初めて聞く名前だった。
その正体は、ならまち(英五さんのお墓の近く)に住むという黒人歌手だった。
英五さんの大ヒット曲である「酒と泪と男と女」を、ジャズ風にアレンジして歌った。もちろん歌詞は英語。
実はこの曲は、「Whiskey&Tears&Man&Woman」という名で、海外でも広く歌われているそうだ。
リズムもアレンジも歌詞も全く違うので、全くの別物といった感じ。
しかしその歌声は素晴らしく、一緒に来ていた友人が急に涙を流し、
「あまりに感動して涙が止まらん」と言ったほど。

◆桂南光
司会者・南光さん、「人前で歌うのは初めて」といいながら登場。
以前から予告していた通り、英五さんの「ベナレスの車引き」を歌った。
失礼ながら…いかんせん、あの「ガラ声」である。お世辞にも上手いとは言えなかった。
初めは観客席から笑い声が漏れていたが、やがてそれも収まる。
南光さんなりに、必死に歌っているのが伝わってくるのだ。
歌い終えて「緊張しましたわ。皆さんも緊張しましたやろ?」と言った南光さん。
会場全体が優しいムードに包まれた。
今回のコンサートの、見せ場のひとつだったといえる。

◆河島あみる
南光さんと同じく、司会者であるあみるさんも一曲披露した。
英五さんの曲「ノウダラの女」。
実はあまり明るい歌ではなにのだが、
小さなタンバリンをひとつ持ち、鳴らしながら軽やかに歌った。
いい意味で「ちょっと昔のアイドル」っぽかった。
今回のゲスト出演者は男性が多く、
唯一の女性アーティスト・アナム&マキも男性的な雰囲気である。
そんな中、あみるさんが「アイドル路線」で歌ったのは良かったように思う。
コンサートに一輪の華を添えた形になった。

◆木村充揮
実際に舞台に登場するまでは「元・憂歌団」という肩書きしか知らず、
TV等も含め、全くもって初見のアーティストだった。
その感想は、良くも悪くも「超個性的」だった。
文章では上手く表現できないが、南光さんが紹介の時に言われた、
「この人は存在そのものが“ブルース”」
というのがぴったりだ。
自分なりにアレンジした「野風憎」を熱唱。

会場から「アホー!」というヤジが飛んだとき、
「何とでも言えや!」と返したのは、プロの為せる業か。
しかし…ああいうヤジってどうなんだろう。
今回は木村さんも、先に出演した円さんもサラリと受け流したが、
はたから聞いていていい気持ちはしないんだけど。

◆南こうせつ
はっきり言って、今回のゲストの最大の目玉はこうせつさんだろう。
キャリア・実績・認知度、全てにおいてやはり、ゲストの中で群を抜いている。
なんてったってフォークの大御所だもんね。
「待ってました!」とばかり、客席からはひときわ大きな拍手。

英五さんがコンサートで使っていたというイスに座り、思い出を語る。
イスが高すぎて、座ると足が届かない。
「英五、大きかったからね…」
と、しんみりとつぶやいた。

作曲:南こうせつ、作詞:河島英五の「風の人、火の人、山の人」を熱唱。
トーク、歌声ともに、「さすが」と思わせるステージだった。

◆谷和彦
一般認知度は低いかも知れないが、
谷さんは、英五さんのバックバンド「スロートレイン」のメンバーとして、10年以上のキャリアを持っている。
肉親を除けば、ゲストの中で最も英五さんを知っている人だろう。
英五さんとの思い出話をしたあと、そのスロートレインとともに英五さんの曲「子供ならもっと、高い山に登りたがるはずさ」を披露。


やがて、「復興の詩」もラストに近づく。
谷和彦さんが言った。
「最後の曲は、河島ファミリーが歌います」
出演者の中からアナム&マキ、司会を務めた河島あみる、
そしてもう一人…今日の初めての登場になる…河島英五の息子、河島翔馬である。
曲目は「元気だしていこう」。これも英五さんのナンバーだ。
翔馬が自身のライブで良く歌うという曲。翔馬氏が中心になってステージを展開。
会場は一気に熱気付き、手拍子・合唱がホールを包んだ。
その一種異様な雰囲気の中で、私は「これがライブコンサートなんだ…」と感無量。

 

最後の曲が終わると、当然アンコールタイムだ。

コンサートは、ここから最高の盛り上がりをみせた。

翔馬が、上着を脱ぎ捨てると、会場がひときわ沸いた。
黒のタンクトップ…、英五さんの定番コンサート衣装だ!!
翔馬が激しくギターを弾き始める。
英五さんのデビュー曲「何かいいことないかな」!

♪何かいいことないかな 何かいいことないかな
  何かいいことないかな 何かいいことないかな

翔馬自らが、観客に立つように促す。

後ろのほう盛り上がってないぞ!StandUp!

私は、河島英五が亡くなってから彼のファンになった。
なので、彼のステージは実際に目にしたことが無いのだ。
しかし今、まるでステージの上に、英五さんが居るような気がする。
「二代目ーーー!!」観客から声が飛ぶ。
私もそれにつられて、思い切り叫んだ。
「英五ーーーーーっ!!!!」
こんな経験は初めてだった。心の底から、言葉が湧きあがってくる。
一緒に歌った。そして叫んだ。

出演者が全員登場して、英五さんの遺作である「旧友再会」を合唱。
生演奏に混じって、生前の英五さんの歌声も聞こえてくる・・・。
胸が熱くなって、ジーン!ときます。
オーラスは、「復興の歌」のテーマ曲「森へ帰ろう」。

♪森へ帰ろう かけがえのない命のために
  森へ帰ろう 傷ついた君を守るために…。

最後の出演者全員揃っての挨拶のシーンでは、あみるさんが息子=英五さんの孫、
「天夢(てん)」君を抱いて出てきた。
突然の「三代目」の登場に、観客からの歓声も高まる。

感動と興奮の渦の中、「復興の詩」は幕を下ろした。

 

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「復興の詩 vol.9」は、成功に終わったと思う。
だが、正直に言うと、手放しで喜べない点もいくつか見られた。
会場にいた全ての人が、心から満足して帰った…とは思えないからだ。
最後に、私なりに感じた次回への「課題」を記しておく。

 

まずは、全くと言っていいほど「チャリティーコンサート」であることが見えなかったこと。
もっとも、私は後から知ったのだが、
「チャリティー色は出さない」というのは、英五さんが居た当時からだったという。
私は今回が参加は初めてだったのだが、もしそれが本当なのだとすれば、
主催者・河島英五の意思を、忠実に受け継いでいる…とも言える。

だが、あえて提言したい。
会場には私のように、このことに疑問を抱いた人も多かったと思う。
そしてその大多数は、未だに「発起人・河島英五さんの意思だ」とは知らずにいるだろう。

固執する必要は無いかも知れないがが、「震災チャリティーコンサート」となっている以上、
コンサートの収益はどんな形で使われていくのか、震災から9年も経っている今でも、
このコンサートを続けてきた意味を、再確認する時間もあって良かったのではないか。

そして、意外にも、最も盛り上がった部分でもある、
アンコール部分にも大きな問題が発生した。
なんと、アンコールの最中、フィナーレを待たずに会場を出て行った人たちがいたのだ。
原因は、今回のコンサートの「客層」にあったのかも知れない。
コンサート中は比較的、しっとりと聴かせる曲も多かった。
また、今回の出演者の中で最も注目を集めていたのは、
間違いなくフォークの大御所・南こうせつさんであった。
南さんの優しい歌を期待してだろうか、比較的観客の年齢層は高めだったように感じた。

ところがアンコールが始まったとたん、
「Stand-Up!!」と言われ、戸惑った人も多かったようだ。
フィナーレを待たず、出口に向かってしまった人は、そのノリについていけなかったのかも知れない。

せっかくのコンサート、最後まで会場に留まらなかった人がいたのは、本当に残念でならない。
「復興の詩」終了後、司会を務めた河島あみるさんが、
自身のHPで、複雑な心境を語っている。

「2000人いれば2000とおりの感想があると思いますが。
 これがまたいろんな意見を毎年いただくんだけど、(英五氏プロデュース時代からね。)
 あっちが立てばこっちが立たず状態で参考にするのはとーても難しいのであります 」
・・・。
(「復興の詩」終了直後のあみるさんのHPより)

色んな人が集まっていたし、コンサートに足を運んだ目的も人それぞれ。
全ての人を満足させることは不可能かもしれない。
だが、それを限りなく100%に近づけるようなコンサートにして欲しいとも思う。

次回は、会場を訪れた全ての人が、一緒にフィナーレを迎えられることを願いたい。

 

確かに問題もあったように思うが、私個人の感想としては、
本当に行ってよかった」と心から思っている。
私の「初コンサート」は、心に大きな感動を残してくれた。
今回の「復興の詩」での経験を、私は一生忘れることは無いだろう。

来年の「復興の歌」は既に決まっていて、4月25日、今回と同じ神戸文化ホールで開催されるという。
「復興の詩」は英五さんが生前「10回続ける」と言っておられた通り、
来年はそのグランド・フィナーレとなる。
絶対に来年も来よう、この場所に。

 

このコンサートのラストに、私も立ち会いたい。

この素晴らしい「命の祭り(河島英五・談)」の最後の瞬間に…。

 

 

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